桜井充メルマガ:「同床異夢」
2月7日に行われた米国とのTPPの事前協議において、日本側から「仮にTPP交渉に参加する場合には、『包括的経済連携に関する基本方針』に基づき、センシティブ品目について配慮を行いつつ、全ての品目を自由化交渉の対象とし、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指す。ただし、全ての品目を自由化交渉の対象とした場合に、どのような自由化が求められるのか、しっかりと理解する必要があるので、情報提供を願いたい。」と説明した。
要するに、米国側から、TPP交渉に参加するのであれば、全ての品目を自由化交渉の対象としてテーブルに乗せなければならないという条件を突き付けられ、それを日本政府が飲んだという事である。
一方、交渉中の各国は、「全品目をテーブルにのせることは全品目の完全撤廃と同義ではない」との説明もあった。わが国も同様の立場をとっており、テーブルにはのせるけれど、除外品目はあるでしょうということである。
実際に、オーストラリアとFTA交渉を行っているが、小麦、砂糖、肉そして乳製品の自由化に関しては、我が国が難色を示しているために、交渉は暗礁に乗り上げている。そのために、オーストラリアは、日本がTPPに参加することに関して、もろ手を挙げて賛成しているわけではない。
このオーストラリアとのFTA交渉でも分かるように、「全品目をテーブルにのせることは全品目の完全撤廃と同義ではない」ということを我が国は実践しているのである。
さて、「包括的経済連携に関する基本方針」において、「我が国に特に大きな利益をもたらすEPAや広域連携については、という枕詞があって、センシティブ品目について配慮を行いつつ、全ての品目を自由化交渉の対象とし、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指す。」となっている。
問題はここからである。TPPは、我が国に特に大きな利益をもたらすEPAや広域連携にあたるのかという点で、政府と慎重派の人たちとの間で意見が分かれている。この点をきちんと整理せずに進んできているから、もめているのである。この点の調整が難しい事は分かっているが、何とか合意点を見出していきたいと考えている。
参議院議員・医師 桜井 充
【秘書のつぶやき】
桜井充秘書小林です。
報道によると、某有名大手飲食企業で、新入社員の女性がわずか2ヶ月で長時間労働により自殺をした件が労災と認定されたそうです。(この件についての報道はなぜか未だ少ないのですが)一月の時間外労働時間は140時間を超えていたとのこと。それにも関わらず、その経営者はツイッターで「労務管理ができていなかったとの認識はない」「会社の存在目的の第一は社員の幸せ」「バングラデシュで学校を作ります。亡くなった彼女も期待してくれていると信じています」と述べていました。この経営者は都知事選で大変注目していた方だけに、残念な気持ちと怒りでいっぱいです。
そもそも、月140時間の残業時間をかけないと仕事がこなせないという事は、経営者かマネージャーの労務管理能力が極めて欠如しているか、もしくは、そもそものビジネスモデルが誤っているのではないでしょうか。過去にホワイトカラーエグゼンプション(いわゆる残業代ゼロ制度)の議論の際に「格差は甘え」「過労死は自己責任」と発言した某女史を再び最近TVで見かけるようになりましたが、日本のサラリーマン文化を考えると過労死は自己責任と言えるような土壌ではありません。ただでさえ、横並びで周りが残業している中を一人だけ早く帰ることすらも難しい「空気」があるのに・・(いいとは思いませんが)以前にも旧日本軍のインパール作戦を例に挙げさせて頂きましたが、教育やマネジメントは、気合いや権力による強制でなんとかなるものではありません。
今回のような事はよく耳にします。ブラック企業で実績を挙げた人間によるハードワークの強制、これは虐待の連鎖ととても似ている気がします。自らの成功事例が他人に必ずしも一致するわけではないという、いい例ではないでしょうか。
そう考えると、政治家というのは企業経営や特定の分野において優れた人ということ以上に、「多角的に物事を見る力とバランス感覚」が必要な資質なのかもしれないなと思いました。とにもかくにも、ブラック企業における諸問題についてもっと切り込んでいきたいと思います。(小林太一)