桜井充メールマガジン

桜井充メルマガ「ライドシェア」

2024年05月31日 (金) 09:16
 ライドシェアの導入に関する議論が盛んに行われている。ライドシェアとは、タクシーの免許を持たない素人が自家用車でタクシー事業を行うことで、タクシーの待ち時間を減らし、利便性を向上させるために検討されている。いわゆる規制緩和である。

 利便性向上のために規制緩和するのだと聞けば、良いことのように感じるかもしれない。実際、2002年に行われた規制緩和では、仙台市内のタクシーの台数は1000台増えて、合計3000台になった。その結果、タクシー待ちはなくなったが、タクシーが道路に溢れて道路を封鎖する、お客さんの取り合いで喧嘩が起こる、ドライバーの給料は下がるといった、数々の深刻な副作用が出てしまった。

 そこで、タクシーの台数を減らすため、宮城県タクシー協会が逆特区という制度を提出し、それを契機に規制緩和は改められた。

 規制緩和を受けて大変な思いをしているのはタクシー業界だけではない。バス業界では、ツアーバスの台数が増えて過当競争になった結果、スキー客が亡くなる痛ましい事故が起こった。トラック業界も同様で、新規参入が増加したことから運賃の引き下げ競争が起こり、トラック運転手のなり手が減ったために、その対策が打ち出された。

 このように、運送関係の規制緩和は何回も行われ、その結果様々な問題が起こっている。規制緩和そのものが悪というわけではないが、過去の事例を勉強していれば、安易に規制緩和するべきとは言えないはずである。

 タクシー運転手が減少した最大の原因は、賃金の低さである。最近、運賃を上げ、やっとなり手が増えてきた途端にライドシェアなどを行ったら、また運転手が減ることになる。アメリカでもライドシェアが行われているが、犯罪が増えており、安全面でも問題が生じている。

 マスコミはライドシェアを良いことのように報じているが、これまでの事を検討したうえで、問題点も報じてもらわなければ、規制緩和は正しく、規制すべきという人は悪というような考えに囚われてしまう。

 もっと冷静な議論を行わなければ、取り返しのつかないことになってしまう。皆さんが安心して移動できるような制度を構築していきたいと考えている。