桜井充メールマガジン

桜井充メルマガ「花粉症2」

2023年04月13日 (木) 17:12
 前回のメルマガでは、花粉症はアレルギー疾患の一つであり、アレルギー反応は免疫反応が変じた作用であるという説明をした。今回も、引き続き花粉症の説明をしていきたいと思う。

 アレルギー疾患である花粉症の発症には、リンパ球の一種である「Th2細胞」が関与している。このリンパ球がIL4とIL5というサイトカイン(タンパク質)を放出して、肥満細胞や好酸球を刺激する。その結果、肥満細胞からはヒスタミンが放出されて鼻汁やくしゃみ等の症状を引き起こし、そして好酸球からロイコトリエンが分泌されて鼻閉を引き起こす。

 この一連の流れから分かるように、花粉症は、その症状を引き起こしているTh2リンパ球、ヒスタミン、そしてロイコトリエンを抑制しなければ解消されないのだが、花粉症の治療薬として抗ヒスタミン剤のみが使用されることも多く、その場合には、十分に症状を抑えることができないのである。

 私が処方する際には、Th2リンパ球の働きを抑える薬と、ヒスタミンを抑える抗ヒスタミン剤、ロイコトリエンを抑えるロイコトリエンの拮抗剤を使用しており、これによって大半の患者さんの症状を改善させることができている。

 花粉症の患者さんの割合は、スギの木がある郊外よりも、花粉が飛んでくるだけの都心部のほうが多い。その理由は、都心部は道路が舗装されており、道路に落ちた花粉が何回も舞い上がることにある。つまり、大気中に大量の花粉が浮遊している状態ができているのである。一方、地方は都心部に比べて舗装されている部分が少なく、地面に落ちた花粉はそのまま土に吸収されるため、大気中に浮遊する花粉の量も少なくなる。

 さらに、都会では粉塵も大気中を浮遊しており、この粉塵と花粉が一緒になって体内に入ってくる。花粉は軽いので、割と簡単に体外に出せるのだが、粉塵は重く、なかなか体外に出せない。その結果、花粉に感作される時間が長くなり、花粉症を引き起こしやすくなる。

 私が花粉症対策を難しいと考える理由は、これまで説明してきたように、結局、花粉症は現代病の一つであるという点にある。私たちが便利だと考えている生活を変えないと本質的には改善されないのだと思う。