桜井充メールマガジン

桜井充メルマガ「耐震構造」

2021年12月10日 (金) 16:23
 耐震基準を満たしていない物件を、大家さんが貸し出すことはできるのだろうか? この答えは、Yesである。耐震基準は建築基準法に義務としてあるものの、基準強化がされた場合にも、すでにある建物には遡及適用しない仕組みになっている。この理由は、すべての建物を新基準で改修せよという、国民への過度の負担となるからだそうだ。
 
耐震基準を満たさない建物を借りて営業しているお店のお客さんが地震で怪我をした場合、その補償責任は基本的に店主にあるのだが、店主が怪我をした場合には、最終的には民法にのっとり、裁判で争うことになるそうだ。
 
日本は地震大国である。特に、近年は首都直下地震や南海トラフでの地震への危機感が高まっている。関東大震災は約100年周期で起こっており、前回の地震は1923年なので、かなりリスクが高い。東日本大震災は、869年に起きた貞観地震と関連づけられることが多いが、貞観地震の18年後には、南海トラフ沿いで大地震が起きている。東日本大震災から10年以上が経過しており、こちらもリスクが高くなっている。
 
このような状況において、本当にこのまま法律を運用していて良いのだろうか。実は、耐震改修に関しては、耐震改修促進法という法律があり、この中では、努力規定ではあるが耐震改修を進めるようにと書かれている。国土強靭化というのであれば、防潮堤だけではなく、このような民間の物件の改修にも力を入れるべきではないかと考えている。