桜井充メールマガジン

桜井充メルマガ「これではね」

2025年08月21日 (木) 12:32
先週、小学4年生の男の子が私の外来を受診した。発達障害で通院している病院があるのだが、症状が全く改善しないので、違う病院を紹介して欲しいということだった。
 
親御さんが言うには、こちらのお子さんは暴れたり、家の外にゴミを投げたり、とにかく手に負えないのだそうだ。話を伺ううちに、親御さんは、なぜそのような行動を起こすのかをお子さんに聞くのではなく、とにかく異常行動をやめるようにと頭ごなしに言っていることが分かった。お子さんの行動の原因を分析しようともせず、注意をしているばかりでは、お子さんの状態が良くなるはずはない。
 
 親御さんの話では、彼は学校に行きたくないと言って、よく鞄を投げるのだそうだ。彼は特別支援学級に通っているのだが、担任の先生から「お子さんのしつけはどうなさっているのですか」と言われたこともあるという。
 
 彼は、いわゆる「普通」ができないから、発達障害と診断され特別支援学級に通っている。この子に「普通」を押しつけても、できるはずはない。できないことを強要されるから暴れるのである。
 
 このようなお子さんに対しては、「普通」を押しつけるのではなく、彼の得意なことを見つけて、伸ばすことが大切である。彼は工作が大好きで、工作なら一日中できるらしい。そこで、彼の母親が働いている介護施設で、一日中工作を行ってもらうことにした。
 
 好きなことをやるのであれば、暴れないよねと聞いたら、彼は「うん」とうなずいてくれた。「普通」にとらわれず、家族が仲良く生活できるようなることを祈っている。